伝統の酒蔵×新しい感覚=可能性∞
向井 政勝
ムカイ マサカツ
『赤嶺酒造場』代表。
広告会社を経営していた時に『赤嶺酒造場』のウェブサイトを制作したことがきっかけで、同社のブランディング全体に携わる。
2020年に代表となる。
長い歴史を持つ会社の社長として、違う分野の人間がやってくることは、ままある話だ。それでも『赤嶺酒造場』の向井政勝社長の前職が商業デザイナーと聞いて、さすがに驚いた。酒蔵とデザイン。この二つには、大きな距離があるように思えたからだ。しかし「自分の中では、それほどの距離は感じなかったんですよ」と、向井さんは話す。
「酒蔵もデザインも、モノ作りという基本は同じ。だけどデザインはモノ(商品)のすべてを作れるわけではないんですよ。でも焼酎造りは、麹造りから瓶詰めまでの全部に携われるんです」それって面白いでしょ?と笑う顔は、少年のようだ。最初は現場で働きながら、焼酎造りを徹底的に学んだという。「そこで実感したのは、焼酎造り自体は昔と変わっていないということ。変わったのは消費者です。現代の消費者のニーズに、いかに合わせるかですね」。ラベルなども自分でデザインし、味だけでなく視覚的にも魅力的な商品を次々と開発していった。「この蔵には焼酎造りの伝統的な技と、私のような外からきた人間の意見を受け入れてくれる懐の深さがある。それは本当にすごいことですよ」。六代目となって、もう2年。柔軟な発想と軽快な行動力を備えた老舗酒蔵は、これからどんな商品を造っていくのだろうか。