しっかり守り、しなやかに変わる。
臼杵銘菓の新時代
後藤 亮馬
ゴトウ リョウマ
『後藤製菓』五代目
臼杵市出身。小学校3年生の頃に埋めたタイムカプセルにも「後藤せいかをつぐ」と書いていたほど、昔から家業を継ぐことが夢だった。大学卒業後に『後藤製菓』に入社。製造・営業・商品開発などを経験し2021年7月に5代目となる。
臼杵の菓子といえば臼杵煎餅。白い蜜が塗られた生姜味の煎餅は、地元の人はもとより大分県の人にはお馴染みの臼杵銘菓だ。後藤亮馬さんは『後藤製菓』の五代目。若い感性と行動力で創業102年の老舗を牽引している。
臼杵煎餅は参勤交代のために考案された保存食が起源で、現在でも7社が製造している。「その中でも弊社は、黒糖の蜜を塗った『臼杵煎餅』など、新しいことへ果敢に挑戦してきた会社です」と、後藤さん。伝統を守るために変わり続ける。その柔軟な社風は、若き経営者の背中を優しく後押しした。彼が取り組んだのは、臼杵煎餅の再構築だ。誰もがおなじみの商品に、どうすれば新鮮な驚きを与えられるか。店での手塗り体験や「手塗り体験キット」の販売は”臼杵煎餅を自分で作る”という目新しさで評判となった。新ブランド『IKUSUATIO』も開発し、若い人への求心力を高めた商品作りにも力を入れている。
保存食から発達した「臼杵煎餅」は、災害が頻発する今、災害食としても注目されるべき郷土菓子だ。「過酷な条件でも食べられるという意味では、災害食と宇宙食は地続き。近い将来『臼杵煎餅』が宇宙で食べられる日が来るかもしれませんよ」と、後藤さんは楽しそうに笑う。参勤交代から宇宙の旅へ。五代目の夢は果てしなく広がってゆく。