野菜嫌いだった少年
有機の里で野菜を育てる
槌本 俊貴
ツチモト トシキ
『槌本農園』代表。
大阪府出身。子どもの頃から野菜が苦手だったが、ある有機農家の作った野菜のおいしさに感動して有機農業の道を志す。『地域おこし協力隊』の一期生として臼杵にやってきた。市の広報誌ではコラムも連載している。
6年前に地域おこし協力隊として臼杵市に移住してきた槌本俊貴さん。3年間の農業研修を経て2018年に『槌本農園』を開いた。最初に臼杵市を訪れたのは、移住希望者向けのモニターツアーだった。この時の農泊で出会った地元の人の優しさや市が推進する有機農業への取り組みに心を打たれ、臼杵市への移住を決めたという。
槌本さんの野菜作りは少量多品目。現在は年間100種ほどの野菜を育てている。「とりあえず今は、要望があった野菜はすべて育てています。楽しいからやれてるけど、効率は悪いかな」と苦笑いだ。有機栽培という個性はあるが、有機栽培農家という大きな枠のなかで自分の個性を打ち出すのは難しい。槌本さんは珍しい野菜を育てたり独自にパンフレットやシールを製作することで『槌本農園』の名前を覚えてもらおうと工夫を重ねる。農業と並行して取り組もうと考えているのがグリーンツーリズムだ。営業許可は取得済みだが、コロナ禍ということもあって宿泊客を受け入れたことはまだない。だが「今のうちに部屋のリフォームなどを進めていきたいですね」と夢を語る。かつて農泊で優しく迎えてもらった自分が、今度は誰かを迎え入れる。人が交流することで生まれる優しさの循環が、この町をさらに魅力的な場所へ変えてゆくのだ。